趣味への入り口

幼稚園時代、オルガン教室が流行った。

通っていた幼稚園で教室が開かれていた。

女の子は皆憧れていたと思う。私もそうだった。

ちゃんと習わないと鍵盤を片手で適当に押してみるくらいしかできないから、レッスンを受けて、皆で歌う童謡を両手で弾ける子は注目の的だった。

私の祖父はそんな気持ちを察し孫可愛さに、小学生になったらすぐ

なぜかピアノ教室に通わせることにした。

たぶん、オルガンよりもピアノのほうがステイタスみたいなところがあったのではないかなと今思っている。

肝心の私は、憧れてはいたけれど、遊び半分で弾ければいいくらいにしか思っていなかったので正直毎週通うのは勘弁して、という気持ちだった。

でも、逆らうことなんて到底無理で仕方なく週1回ピアノの個人教室に通うことになった。

 

その教室は独身の若い女の先生が自宅で教えてくれる、ちょい古い民家だった。

この先生が結構キツイ性格だった。

何の楽器でも弾きこなすのは相当難しいもので、ピアノも、何度弾いても同じところを同じ指で間違って押してしまう。

そうするとその先生、「またそこ押したじゃない、その間違って押す薬指は切り取ってしまいなさいよ」とヒステリックに叫ぶ。

幼い私は恐怖に震えた。それに幼稚園の、あの花々に囲まれたような雰囲気のオルガンレッスンとのあまりの落差に教本の音譜も鉛の玉に見えた。古い民家だったので部屋も少々薄暗い印象があり、ますます気持ちは落ち込んだ。

けれど、大人しい性格で逆らうことのできない私は、赤いバツ印のついた鉛の玉の部分を自宅でも一生懸命練習した。

自宅で練習用に買ってもらったのは、なぜか電気オルガンだった。

あの頃いっせいに売り出していたからかピアノを買うには予算が足りなかったからか、

私はどうでもよかったけれど。